床版は橋を支える欠かせない存在!建設方法や補修方法を専門業者の視点で徹底解説
橋は私たちの生活になくてはならない交通の要であり、中でも「床版」は橋を支えながら人や車両を安全に通過させるという重要な役割を担っています。
そして、日本の橋のおよそ6割は2032年に建設後50年を経過するため、今後、床版や橋そのものの建設、補修に高い関心が集まることは明らかです。
- 床版の基礎知識
- 床版の建設方法
- 床版の補修、補強方法
この記事を通して、床版に関わる上記の点を知っていきましょう。
橋の床版とは?
まずは橋の床版に関する基礎知識について解説していきますが、文字通り、橋の床板(ゆかいた)のことを床版(しょうばん)と呼びます。
私たちが歩いたり、車で通過する場所のことを指しますが、役割を下記にまとめました。
- 車両や人が安全に通過できる路面を提供する
- 橋にかかる荷重を橋脚、橋桁に伝える
- 橋脚や橋桁が腐食しないよう水を食い止める
ご覧のように、路面を提供するだけでなく、荷重の分散や腐食防止など、橋の安全性にも大きく関係しています。
また、床版の構造はコンクリートと鉄筋を組み合わせたRC造(鉄筋コンクリート造)です。
RC造は鉄筋が持つ引張力(引っ張る力)に強いという性質と、コンクリートの持つ圧縮力に強いという性質を合わせ持っているので、橋全体の強度をRC造の床版が支えていることがわかります。
床版橋と桁橋の違い
また、床版に関連して「床版橋(しょうばんきょう)と桁橋(けたばし)の違い」についても解説します。
両者の違いを表にまとめました。
床版橋 | 桁橋 | |
---|---|---|
構造 | 床版のみ | 床版と桁 |
長さ | 短い | 長い |
製造コスト | 低い | 高い |
ご覧のように、床版橋は両端で床版を支える単純な構造をしているのに対し、桁橋は「桁(けた)」で床版を支えることでより長距離の橋を建設することを可能にしています。
また、桁が床版と一体となった桁橋を合成桁橋、別々になった桁橋を非合成桁橋と呼び区別するのも特徴です。
もちろん、いずれの橋にも床版は使われているので、桁橋だからといって床版が使われていないわけではありません。
あくまで、橋の特徴を捉えた上での橋の分類用語なので、この点には注意をしてください。
橋の床版の建設方法
続いて、橋の床版の建設方法について解説していきます。
- 型枠を橋脚の上に設置する
- 鉄筋を並べて固定する
- 生コンクリートを充填し養生する
- 壁高欄や中央分離帯を設置する
- 防水処理を実施する
この5つのステップを経ることで床版が建設されるので、順番に確認していきましょう。
1:型枠を橋脚の上に設置する
まずは床版を作るために必要な型枠を橋脚の上に設置していきます。
型枠は床版の原型となる枠のことで、これをもととして鉄筋を配置し、コンクリートを充填することで床版を建設します。
なお、橋脚を建設する業者と床版を建設する業者は異なる場合が多く、この作業を行うにあたり業者間の引き継ぎ作業が実施されることが一般的です。
2:鉄筋を並べて固定する
続いて、型枠をもととして鉄筋を並べていきます。
鉄筋はRC造の強度を支える重要な存在なので、ミスがないように配置、固定することが大切です。
3:生コンクリートを充填し養生する
鉄筋を並べたら、生コンクリートを流し込み、充填していきます。
橋の上は高所であり、かつ橋の下に一般道や歩道があるケースがほとんどなので、橋の側面から生コンクリートを流し込めません。
したがって、生コンクリートを流すポンプが通るスペースを、床版部に確保しておく必要があります。
また、コンクリートが固まるまで、適切な温度を保ったままシートやマットで保護をする養生作業も欠かせません。
とくに冬場の低温化ではコンクリートが固まりにくいので、床版下部にヒーターを設置して養生をするケースもあります。
4:壁高欄や中央分離帯を設置する
コンクリートを充填し、養生が済んだら、橋として機能させるために必要なものを設置していきます。
- 壁高欄(橋側面にある落下防止の壁)
- 落下物防止用の柵
- 中央分離帯
一般的にはこのようなものを建設、設置することも、床版工事の一部に含まれます。
5:舗装工事を実施する
最後に、路面に舗装工事を実施して仕上げ作業を行います。
防水処理やライン引きなどがあげられますが、床版工事とは別の業者が行うことも珍しくありません。
その場合、業者間での引き継ぎが必要になります。
今後は橋の床版の補修、補強が強く求められる
最後に、今後需要が高まることが予想される「床版の補修、補強工事」について解説していきます。
現在、日本国内にはおよそ73万の橋が存在しており、その6割程度が2032年度に建設後50年を迎えます。
1920年代に交通網を整備したアメリカでは、60年後の1980年代になって橋が次々と損壊する事態に見舞われました。
これを「荒廃するアメリカ」と呼んだように、「荒廃する日本」が目前に迫っていることを強く意識する必要があります。
そして、橋の安全性を確保する上では、床版の補修、補強は欠かせません。
その中でも、私たち「サン・ロード株式会社」が提供している「スーパーホゼン式工法」は、多くのメリットがある工法です。
スーパーホゼン式工法とは?
スーパーホゼン式工法は、床版の下部から鉄筋が網状になった網鉄筋を設置し、さらにコンクリートのひび割れに充填材を注入することで、床版の架け替えを行わずに補修工事ができる画期的な工法です。
特徴やメリットを下記にまとめました。
- 床版の架け替えが不要なのでコストや産業廃棄物を削減できる
- 床版下部から工事を行うので交通整理が不要
- 大学と連携することで疲労耐久性に対する有効性を確認済み
- 国土交通省による「活用促進技術」に認定済み
ご覧のように、メリットや信頼性に富んだ床版補修工法であることがわかります。
スーパーホゼン式工法の手順
次に、スーパーホゼン式工法の手順を下記にまとめました。
なお、【数字】の部分は段階を示しています。
- 【1】カッター溝をあけ樹脂導入路を造る
- 【1】テーパー付きT型アンカーで網鉄筋を床版下部に圧着固定する
- 【2】ポリマーセメントモルタルで床版下部と網鉄筋を全面接着する
- 【3】超低粘度エポキシ樹脂を注入する
- 【3】仕上げ作業を行う
ご覧のように、この工法は3段階にわかれていますが、「テーパー付きT型アンカーによる圧着固定」「超低粘度エポキシ樹脂の注入」の2つがポイントです。
「テーパー付きT型アンカーによる圧着固定」により、既存の床版と増設する網鉄筋を完全に固定することで、床版上部を車両が通過する状態でも確実な作業を可能にします。
また、第一段階、第二段階の下準備を終えた後に「超低粘度エポキシ樹脂の注入」を行うことにより、従来の作業では難しかった「0.2mm未満」の微細なひび割れに対する樹脂の注入を実現しました。
これにより、補修後の床版が新設床版と同等の疲労耐久性を持つことを確認しています。
興味を持っていただけたお客様は、弊社カタログにて詳細をご確認いただけますと幸いです。
まとめ
床版は橋を支える欠かせない存在です。
今後、日本全国において補修工事の需要が高まるため、建設方法だけでなく、補修方法についても理解を深めることが求められます。