床版の補修や補強の工法7選!専門業者の視点で徹底解説
日本国内には現在、73万の橋が存在しており、その6割程度が2032年度に建設後50年を迎えます。
これに伴い、日本全国で橋、とりわけ床版の補修や補強が必要になることは明らかです。
- 床版の補修と補強の違い
- 床版の補修、補強工法
- 新時代の工法「スーパーホゼン式工法」
床版の補修や補強に関する上記の点について、専門業者の視点でわかりやすく解説していきます。
床版の補修と補強の違いとは?
床版とは橋の中でも人や車両が通過する「床板(ゆかいた)」のことを指しますが、メンテナンスの方法として「補修」「補強」の2つが存在します。
両者は混同されがちなので、下記に簡潔にまとめました。
- 補修
- 劣化を抑え、耐久性を回復、向上させる。
- 補強
- 耐久性だけでなく、耐荷性など力学的性能も回復、向上させる。
一言でまとめると、補修は「寿命を伸ばすこと」であり、補強は「寿命の延長に加え性能をアップさせること」だと言えます。
床版の補修工法2選
まずは床版の補修と補強の違いについて簡潔にまとめましたが、ここからはそれぞれの工法について解説していきます。
- ひび割れ注入工法
- 断面修復工法
まずは補修工法として、上記2つの工法を解説していきます。
ひび割れ注入工法
コンクリートに入った「ひび割れ」を放置すると、建設時に想定していた耐荷性を発揮できなくなります。
「ひび割れ注入工法」は、生じたひび割れに対して注入剤を充填することで、ひび割れを直す工法です。
特徴を下記にまとめました。
- 注入剤にはエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの有機系、ポリマーセメントモルタルなどの無機系が使われる
- 注入器具を使うことで作業員の練度が低くても作業可能
- 現在は特殊な注入器具を使用して注入を自動化した工法が一般的
現在は確実かつ簡単にひび割れを修復する工法が確立されているので、ひび割れのみを修復したいときに活用したい工法です。
断面修復工法
コンクリートの劣化により剥離や剥落が生じると、構造物全体に悪影響を与えます。
「断面修復工法」は、コンクリートの剥離や剥落部を修復する床版補修工法です。
特徴を下記にまとめました。
- 断面修復剤やモルタルを充填することで修復する
- 劣化度合いや部位の大きさにより工法を使い分ける
- 補修だけでなく補強効果も期待できる可能性がある
工法はいくつか存在し、モルタルを左官仕上げする左官工法や、型枠の中にモルタルを直接注入するモルタル注入工法などが採用されます。
修復部位に適した工法をケースバイケースで選ぶことが大切です。
床版の補強工法4選
続いて、床版の耐荷性など性能面をアップさせる補強工法を4つ紹介していきます。
- 上面増厚工法
- 鋼板接着工法
- CFRP接着工法
- 縦桁増設工法
これらの工法について、順番に確認していきましょう。
上面増厚工法
床版の補強工法は「床版の表裏(上下)どちらを補強するのか」で大きく分けられますが、「上面増厚工法」は上面を補強する工法です。
特徴を下記にまとめました。
- 床版上面に補強材を埋設する工法
- 床版上面の作業なので足場などの設置が不要
- 交通整理が必要になる
炭素繊維製のプレートをモルタルの中に埋め込む「CFRP埋設工法」など、採用する補強材によって工法が分けられます。
床版上面に作業する都合上、足場の設置などが不要なので施工性が高い反面、交通整理が必要になる点がデメリットです。
CFRP接着工法
先述の「上面増厚工法」の一種である「CFRP埋設工法」の「下面バージョン」とも言えるのが、CFRP接着工法です。
- 床版下面に炭素繊維性プレートを接着させ一体化させる
- 炭素繊維は軽量かつコンパクトなので下面からでも作業しやすい
- 床版下部への作業なので交通整理が不要
厚み1mm〜2mm程度の軽量の炭素繊維を接着するので、非常に施工性に優れている点が特徴としてあげられます。
鋼板接着工法
鋼板接着工法は、床版の下面へと鋼板を接着させ補強を行う工法です。
- 床版下面と鋼板との間にエポキシ樹脂を注入し一体化させる
- 時間経過により床版と鋼板の剥離が生じる可能性がある
- 床版下部への作業なので交通整理が不要
鋼板を直接床版へと接着するので、確実に補強効果を得られる点がメリットとしてあげられます。
一方で、時間が経つと鋼板が剥離する「浮き」という現象が報告されており、補強寿命が比較的短い点がデメリットです。
縦桁増設工法
橋梁を支える役割を持つ「桁(けた)」を床版に増設することで性能を向上させるのが「縦桁増設工法」です。
- 耐荷性を大幅に向上させられる
- 桁を設置する上で力学的に問題がないか事前調査が必要
- 床版下部への作業なので交通整理が不要
桁を増設することで大幅な性能向上が見込めるのが強みですが、増設する桁が床版に与える力学的な影響を考慮する必要があります。
【新時代の工法】スーパーホゼン式工法とは?
床版の補修、補強工法を合わせて6つ紹介しましたが、いずれの工法にもメリットがあれば、デメリットも存在しています。
たとえば、補修工法では耐久性の向上はできるものの、耐荷性の向上は見込めません。
また、CFRP接着工法や鋼板接着工法などの「下面から工事を行う工法」では、交通整理が不要な反面、絶えず床版上面を車両が通行する中で工事を行う必要があります。
車両通過により橋梁全体が常に振動するので、この中で工事を行うことで生じる歪みが下面補強工法の課題でした。
ここからは、こういった点を克服した画期的な工法であり、私たち「サン・ロード株式会社」が特許を持つ「スーパーホゼン式工法」について紹介していきます。
スーパーホゼン式工法の作業手順
スーパーホゼン式工法の特徴には、作業の流れが大きく関わっています。
全体の手順は3つに分かれており、全部で5つのステップにまとめられます。
詳細は下記にてご確認ください。
- カッター溝をあけ樹脂導入路を造る
- テーパー付きT型アンカーで網鉄筋を床版下部に圧着固定する
- ポリマーセメントモルタルで床版下部と網鉄筋を全面接着する
- 超低粘度エポキシ樹脂を注入する
- 仕上げ作業を行う
スーパーホゼン式工法では、この5つのステップを順番に経ることで、従来の工法で懸念されていたデメリットの克服を実現しました。
スーパーホゼン式工法のメリット
次に、スーパーホゼン式工法のメリットについて下記にまとめました。
- 樹脂導入路を事前に作ることで無数に存在する0.2mm未満のひび割れに対応できる
- アンカー、モルタルで鉄筋を床版下部に固定、接着することで振動による歪みを解消した状態で作業ができる
- 補修(ひび割れの修復)と補強(網鉄筋の接着)を同時に行える
- 網鉄筋を強固に接着することで鋼板接着工法のような剥落の心配がない
- 施工後の損傷度を目視で確認できる
- 使用する材料が軽量、かつ施工性に優れるので工期短縮、コスト軽減が期待できる
補修と補強を同時に実施でき、かつ施工性、メンテナンス性に優れた工法、それがスーパーホゼン式工法なので、今後積極的に活用いただきたい工法です。
まとめ
床版の補修、補強は今後、需要が高まることが予想されます。
メリットの多いスーパーホゼン式工法について気になる方は、ぜひ弊社カタログをご覧ください。